ロボット活用を進める企業とそれ以外の企業の差が開きつつある

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森山 和道

フリーランスのサイエンスライター、科学書の書評屋。
科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。ウェブ連載に、 PC Watch「人と機械の境界面」、 ビジネス+IT「ロボット基礎講座」、 ロボスタ「ロボットのみかた」 など。

人間と空間を共有できるロボットの登場

 

これまでのロボットは主に自動車工場などで活用されてきた。大人数が行なう作業を、安全柵の中に据え置いたロボットで代替する。ロボット自体の価格だけでなく、ロボットを使えるように周辺環境を整えるためにもコストがかかるため、大人数の作業を代替できなければコストメリットが出せず、そのため、自動車産業のような領域でないと活用できなかった。ここで使われるロボットは、基本的には同じ作業をひたすら繰り返すものである。

 

いっぽう、近年注目されはじめているのは「協働ロボット」と呼ばれる軽量のロボットだ。軽量であるため力も抑えられており、重量物を扱うことはできないし、動作の繰り返し精度も劣る。しかし、そのぶん、人と空間を共有して作業することができる。自動車工場内でのロボットは床に固定されているが、協働ロボットの場合は、ロボット本体を動かして異なるラインに持っていき、一つの作業だけではなく複数の作業を行わせることで、ロボット自体の稼働率を上げることもできなくはない。こちらはロボット自体の価格が抑えられていて、周辺設備もそこまで高くない。そのため、これまで人が行なっていた、ちょっとした作業をやらせるために用いられ始めている。

人一人分とまでいかなくても、半人前くらいの作業をやらせる。そんなロボットがジワジワと普及し始めている。

人口減少によるロボット導入の加速化

 

そうはいっても、ロボットはまだまだ高いし、人間のように「はい、この作業をやってください」といった雑な命令で動くわけではない。動かすには専門家によるそれなりの手間とコストがかかる。それでもロボット導入が進み始めている背景には、生産年齢人口減少による人手不足がある。これまでは集めることができていた人数が、なかなか集まらなくなってきた。時給を上げても、今後はもっと集まらなくなる。

以前から言われていたことだったが、2015年くらいからどの業界でも本当に人が集まりにくくなり始めている。

その結果、ロボットのユーザーたちも、ロボットのコストに対する考え方が変わってきた。これまでのロボットに対するコスト計算は単に人数×給料分だったと言ってもいい。だが昨今は人を集めて雇い直したり、労務管理したりするコストがどんどん上がってきてしまい、それらもロボットのコストのなかに含めて捉えるようになってきたのである。もともとロボットの場合は最初からメンテナンスコストなど維持費も考慮するのだから当然といえば当然なのだが、総合的に考えると、何度も人を雇いなおすよりは、今のうちにロボットそのほか自動機械を入れて会社が回るように切り替えたほうがいい、と判断する経営者たちが増えてきた。その結果、各業界でロボットの導入が始まっている。

冒頭で述べた自動車業界でも、まだこれまでは人手が残っていた部分をさらに自動機械に置き換えつつある。それだけでなく、通称「3品」と呼ばれる、医薬品、化粧品、食品の3つの業界の工場では、以前からロボットが活用できる領域として注目されていたが、いまは本格的に導入され始めている。具体的には、人間が作業すること自体は可能だが、集中力がなかなか続かないような繊細な連続作業には、ロボットのほうが人間よりも向いている。

 

物流業界におけるロボットの活用

 

また、最近ロボット活用において熱い業界が物流だ。物流倉庫内でロボットを使うのだ。物流はメーカーと小売の間を繋ぐ。裏方だが、なくてはならない業界だ。アマゾンや楽天などEC業界(e-コマース業界)は年々活況を呈しており、自動化まったなしの状況にある。そして物流倉庫内は、もともとロボットに向いていた。基本的には屋内だし、既に多くの自動化機械が使われているからだ。ロボットには既存の自動機械の間を繋ぐ役割が求められている。

では、なぜこれまではロボットが使われていなかったかというと、物流業界は中間業者だからだ。生産者であれば、自分たちが何を作るかはわかっているし、ロボットに何を扱わせればいいかもコントロールできる。しかしながら物流業界は中間業者なので、自分たちが扱うモノを、自分たち自身でコントロールすることができない。何が来るかわからない状況に技術で対応するにはまだハードルがあった。だからこれまで人手が大量に投入されていた。

しかし、いまロボットが導入され始めている理由は、ロボットと認識技術が、導入の壁を乗り越えつつあるからだ。まだまだ課題はある。難しいものは難しい。しかし、自動倉庫や倉庫全体をマネージするシステムと連携しながら、これまで人間がひたすらダンボールケースを積み上げていたようなきつい作業が、ロボットがやる作業へと徐々に変わりつつある。

ロボットを動かすことの利点は作業負荷の減少だけではない。ロボットは、それ自体がデータを吐き出し続けるセンサーとしても働く。データは現場改善に用いることができる。またロボットでモノを動かすことでモノの配置自体が徐々に最適化されていくようなシステムを組むことも可能だ。これがいわゆる「サイバーとフィジカルの融合」である。動かすことで様々なノウハウも溜まる。

こうして、ロボットを使っている現場はどんどん先へと進んでいく。

 

 

非ロボット活用業界が直面する危機

 

いっぽう、ロボット化が進んでいない現場、人手を投入している現場はまだまだ多い。そういったレガシーな業界とロボット活用を進めている現場とのあいだには、溝が生まれ、その溝が急激に広がり始めている。

程なく、埋めがたい差になっていくことは間違いない。しかし、現場のロボットにできることが変わり始めていることを知らない人たちには、その現状が伝わっていない。私はこれを一番懸念している。

 

もう一度言う。いま、大きな差が開き始めている。そのことを知ってもらいたい。選択を間違わないでほしい。自動化を進めるのは今なのだ。

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森山 和道

フリーランスのサイエンスライター、科学書の書評屋。
科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。ウェブ連載に、 PC Watch「人と機械の境界面」、 ビジネス+IT「ロボット基礎講座」、 ロボスタ「ロボットのみかた」 など。